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第一話 美畑慧子
第二話 慧子と男たち
第三話 スタジオストップス

2008年10月16日

花村香澄の苦悩

慧子から、須田冬美の言い分を聞かされてから、花村香澄は
須田冬美と、どのように接していいかわからなくなっていた。

今まで、病気であることも聞かされていたので、かばいつつも
ごく自然に接してきたつもりだった。

須田冬美が自分に対してライバル心を持っていることは
わかってはいたものの・・・

人の良い、香澄には、人を陥れるという発想はまったく
理解できないことだったし、思い浮かびもしなかった。

どのように、須田冬美に接したら良いのか・・・
普通にしているつもりでも、また慧子に泣きつかれたら
どうしたらいいんだろう・・・

香澄は、だんだんと須田冬美を避けるようになった。

恐ろしかったのだ。

何も意地の悪いことなんかしていないのに・・・
常に、須田冬美は被害者なのだ。

何もしていなくても、加害者にされてしまう。


香澄は、須田冬美に首を絞められる、恐ろしい夢を見た時の
自分の方へ垂れ下がってくる黒い長い髪の気持ち悪い感触が
忘れられなかった。

あれは、やはり夢ではなかったんじゃないのか・・・
香澄は、生霊という言葉を頭に浮かべた。

実際、須田冬美の香澄に対するライバル心は、それほどに
強いものだったのだ。
気になることがあると、一日中そのことばかりを考えている。
なんとしても、自分の目的を達成したい・・・
その思いに取り憑かれたように生きていた。

スタジオの業務の忙しさもあり、香澄はだんだんと
精神的に追いつめられていった。





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posted by 桃色珊瑚 at 00:41 | Comment(0) | TrackBack(2) | 慧子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月05日

理不尽な場所・・・スタジオストップス

須田冬美が花村香澄のことを慧子とたまこちゃんに
ご相談した次の日・・・

慧子は須田冬美からのご相談の件を花村香澄に話した。

香澄にしてみれば寝耳に水の話である。
須田冬美とは、極普通に接していたわけで・・・
いじめるとか冷たくするなんてことは、どう考えても
なかったわけで・・・・

なんのことを言われているのか、さっぱりわからない
香澄だった。

ただひとつ、秘密のノートを見せられてしまったこと
だけが、思い当たる原因の唯一だった。


慧子は、自分も嫉妬心の強い方だったので、須田冬美が
花村香澄に対する嫉妬からこのような行動に出ている
ことは、わかっていた。

しかし、病気という武器を持っている須田冬美を嗜める
ことはできなかった。

そんなことをして、被害妄想など持たれて騒がれては
たまったものではない。

花村香澄ひとりに我慢させておけば、それで済む・・・
そんな汚いことを考えていた。

どっちみち、スタジオストップスというところは
ただしい道理なんて通らないところだ。

慧子の考えひとつで全てが変わる。
そんな理不尽な場所・・・
それがスタジオストップスなのだ。




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posted by 桃色珊瑚 at 17:34 | Comment(1) | TrackBack(1) | 慧子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月24日

須田冬美の野望

秘密のノート事件以来、花村香澄は須田冬美のことを
恐ろしいとは思っていたものの、体面的にはごく普通に
接してはいた。

そんなある日のこと、須田冬美は慧子とたま子ちゃんを
ランチに誘った。
須田冬美は発作で倒れてから外で食事をすることが、苦手で
皆と一緒にランチもあまり行かなかったのだが・・・

この時は、「ご相談したいことがあるんです〜」
と、慧子とたま子ちゃんに猫なで声を出して誘ってみた。

このご相談とは、なんと花村香澄のことだったのだ。

須田冬美は慧子とたま子ちゃんに涙ながらに訴えた。
「私・・・花村さんに嫌われているみたいなんです・・・」
自分が花村香澄にひどい態度をとられている・・・
というのだ。

これこそが、罠だった。

邪魔な香澄をスタジオから追い出すための罠だった。

須田冬美は、これまでこの方法で邪魔者を追い出す
ということを以前のスタジオで何度もやっていたのだ。

自分の病気と生い立ちを最大限に生かして、わがままな願望を
叶えてしまおうという考えだった。

花村香澄さえいなけれれば、自分はいつも慧子のそばにいられる。

憧れのインストラクターにだってなれるかもしれない。

須田冬美の野望はどんどん膨らんでいった。




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posted by 桃色珊瑚 at 21:05 | Comment(0) | TrackBack(2) | 慧子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月20日

恐ろしい思いをした花村香澄

秘密のノートを見せられてから、花村香澄は須田冬美のことが
心底恐ろしくなった。

そして、このノートのことを山村功に知らせなくては
行けない・・・と思った。

メールの内容をノートに書き綴るなんて、尋常ではない。

香澄は須田冬美の家から帰って家に着くと、なにか毒気に
当たったような、妙な疲れを感じた。

香澄は、秘密のノートを見て、今まで自分が感じていたことが
間違いでなかったことを確信していた。

レッスンの度に増えていく、車の傷は間違いなく須田冬美の
仕業だ・・・そう思った。

次の日、香澄は慧子に秘密のノートのことを話した。
とにかく、山村功には気を付けてほしかった。

そして、そのころ香澄は、須田冬美に首を絞められる夢をみた。
香澄自身、それが夢・・・とは言い切れないものがあった。

金縛りのような状態になって・・・
夢にしてはあまりにリアルだった・・・

香澄は、夢だ・・・と思い込もうとしたものの
須田冬美の異常な執着心は、科学では証明できないような
現象を起こしたのではないか?・・・などと思わせるものがあった。

その日から、香澄は須田冬美とは、できるだけ距離を置くように
心がけた。

しかし、これこそが須田冬美の罠だったのだ。

そして、これはまだまだ始まりにすぎなかった。


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posted by 桃色珊瑚 at 01:15 | Comment(0) | TrackBack(1) | 慧子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月18日

秘密のノート

花村香澄が須田冬美の自宅を訪問すると、須田冬美はレッスン後で
疲れて休んでいたようだった。

香澄が、生菓子をおいてすぐに帰ろうとすると
須田冬美は、相談があるので家に上がって欲しいと言う。

香澄は早く帰りたかったのだが、成り行きで仕方なく
家に上がることにした。

香澄は、なんとなく居心地の悪さを感じたものの
出されたお茶を飲み、他愛もない話をした。

しばらく話をすると、須田冬美はちょっと決心したように
話を切り出した。

その話とは・・・
メル友としてメールのやり取りをしている、山村功の様子が
最近おかしい、と言うのだ。

メールを出しても以前のようにすぐに返ってこないことが
多い・・・電話をしても出てくれないこともある。
・・・ということだった。

「ご迷惑なんでしょうかねえ・・・」
そう言って俯く須田冬美に・・・

そんな相談をされたって・・・
香澄は山村功が迷惑がっているという話は聞いてはいたものの
・・・それをそのまま伝えることはできなかった。

そんなことをして、ショックで倒れられたりしたら
大変なことになってしまう。

あくまでソフトに、山村功は仕事をしているのだから
すぐにメールを返せないこともある・・・
電話に出れないことだってあると思うし・・・
・・・みたいな曖昧な答え方しかできなかった。

須田冬美は、見せたいものがある・・・と言って
大学ノートをだしてきて、香澄に読むように促した。

香澄はそのノートを読んで背筋がゾッとした。

そのノートには、須田冬美と山村功とのメールでの
やりとりが、事細かに書き込んであった。

しかも手書きで・・・


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posted by 桃色珊瑚 at 21:52 | Comment(0) | TrackBack(1) | 慧子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月17日

須田冬美の忘れ物を届ける香澄

慧子は、このところ膝の調子がすこぶる悪かった。

といっても、ダンサーの中には慧子くらいの膝の痛みでも
我慢して、踊っているダンサーもたくさんいるのだ。

けれど、痛いのは我慢できない慧子だった。
膝の痛みにしろ、生理痛にしろ、痛かったり
調子が悪いときはサボリ癖がでるのだ。

そんなある日、彼氏だと慧子だけが思っている安田の実家に
行った慧子は、帰ってきてレッスンするのが嫌になって
しまって、いつものように花村香澄に代行レッスンを頼んだ。

香澄は、いつものように真面目にレッスンに臨んだ。

その日は、子供の生徒さんの親御さんが生菓子を差し入れ
してくれて・・・
香澄が電話で慧子にその旨、話をすると、
「私の分、ひとつだけ冷蔵庫にとっておいて〜
あとは、皆でわけてね〜」
ということだったので、香澄は皆に分けたのだが・・・



レッスンが終わって・・・

皆が帰った後、見ると・・・須田冬美が持ち帰るのを忘れている・・・

生菓子だし・・・どうしたものか・・・
少し考えはしたものの、身軽な香澄は、須田冬美の家まで
届けることにした。

車で20分ほどのところだ。
たいしたことはない。


そして・・・
須田冬美の家まで、生菓子を届けた香澄であったのだが・・・



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posted by 桃色珊瑚 at 23:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | 慧子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月15日

ますますサスペンスドラマ化する須田冬美

須田冬美は、確かにダンスはある程度踊れていた・・・

しかし・・・どうしても癖が出てしまうのだ。
激しい思い込みの強い性格で、柔軟な対応ができない。

慧子も須田冬美のダンスの癖を直したかったのだが
あまり強く言うこともできずにいた。

レッスン中にショックでも受けて、倒れでもして
救急車を呼ぶような騒動は避けたかった。

主婦クラスでも、他の生徒にはストレートに注意できる
のだが、須田冬美に注意をするには細心の注意が必要だった。

もちろん、花村香澄はインストラクターでもあったので
慧子の注意をうけることも多かった。

そのうち、須田冬美は注意を受けている花村香澄より
注意を受けない自分の方が優れていると思い始めていた。

そう思うと、ますます花村香澄のことが憂っとおしくなった。

そのうち、須田冬美の頭に花村香澄を陥れようという
考えが浮かんだ。

「あいつがいなくなればいいんだ。」
そうすれば、慧子もスタジオも自分の意のままになる
ような、錯覚に陥っていた。


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posted by 桃色珊瑚 at 17:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 慧子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月11日

まるでサスペンスドラマのような須田冬美

須田冬美は、一人でいると、どうしても山村功のことを
考えてしまう・・・そんな、自分が居たたまれなくて

ダンスに熱中しようとしていた。
そんな須田冬美の気にさわっていたのが
花村香澄だった。

慧子から信頼され、インストラクターとしてクラスを
任されててもおり、須田冬美の欲しいものを全部持っていた。

こいつさえ居なければ、自分がトップになれるのに・・・
須田冬美は花村香澄を見るたびに悔しい気持ちになっていた。

慧子に、須田冬美が目をかけて欲しいばかりに
いろいろ提案をすると、ほとんどの場合
「花村に任せてあるから」
と言われてしまうのだ。

その頃から、須田冬美はスタジオからの帰り際
花村香澄の車にキーの背中で傷を付けていくようになった。

最初は、気も付かなかった香澄だが、次第におかしい・・・
と思うようになり、須田冬美の態度や視線にも殺気のような
ものを感じるようになっていた。

須田冬美の、怨念のようなこだわりは、今や山村功と
花村香澄の二人に集中していた。


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posted by 桃色珊瑚 at 15:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 慧子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月09日

須田冬美の異常な行動

大病を患い、生還した山村功にとって、山田好恵は
自分を太陽のように照らしてくれているような気がした。

生命力そのものだった。

須田冬美のメール攻撃といくら病気とは言っても
あまりにもひどい思い込みは山村功を精神的にも
追い込んでいた。

やんわりと、迷惑だ・・・という内容のメールを送っても
自分にとって都合のいいように解釈してしまうのだ。

須田冬美にしてみれば、自分が迷惑がられているなんてことは
絶対に認められないことだった。

どんな故実けをしても、認めてはいけないことだった。

そうして、迷惑がられていることをひたすら否定して
独り相撲をとっている須田冬美だった。


この少し前から、須田冬美は山村功とのメールを
ノートに書き取るようになっていた。

一字一句。
もちろん自分が送ったメールもだ。

直筆で大学ノートに書き取っていた。

異常に強い執着心の現れなのだ。

そして、読み返すのだ。
メールだと自分が送ったメールと山村功からの
メールを同時に見ることはできない。

読み返して、検証するのだ。
山村功の気持ちが自分にあることを・・・

それは、ゾッとするほど異常なものだった。

山村功は、自分は何もしてもいないのに刺されるのでは
ないかと思う程の殺気を感じていた。


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2008年09月08日

山田好恵の戸惑い

山田好恵にとって、山村功は、同じ劇団になる前は
スーパースターだった。

ストップスの公演では、いつもヒーローだったし
歌も踊りも抜群に上手いし・・・

けれど、同じ劇団になって、四六時中一緒にいるようになると
山村功は、親父ギャグやダジャレをとばすことに、一生懸命に
なっているのだ・・・
それまでとはイメージが全く違ってしまった。

20歳も違う山村功を男性として見ることが云々・・・
といったことではなく、そのギャップに戸惑っていた。

山田好恵にしてみれば、カッコいい王子様がひょうきんおじさんに
変身してしまった感じなのだ。

醜い蛙が王子様になる話は聞いたことがあるが・・・
その反対はあまり聞いたことはない・・・

山田好恵はこれまで、男にモテたためしがなかった。
身体も大きいし、頼るより頼られるタイプだった。
それがだ・・・
山村功の自分に対する態度はまるでお姫様に仕える
下僕のようなのだ。

そんな扱いを受けたことのない山田好恵は、とにかく
戸惑っていた。





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posted by 桃色珊瑚 at 22:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 慧子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月07日

山村功の恋心

山村功は恋をしていた。

・・・といっても、須田冬美ではない。

同じ劇団の・・・前から知っているのだが・・・
最近、劇団に入団してきた山田好恵に、恋をしていた。

そうだ、慧子が我が子のように可愛がっている山田好恵だ。

山田好恵に山村功は、これまでの自分の価値観を覆すような
不思議な魅力を感じていた。

普通の女の子のように取り繕ったりすることもなく
天真爛漫で・・・
慧子の天真爛漫には、悪意があったが、山田好恵の天真爛漫には
悪意のかけらも感じられなかった。

だが、山村功は結婚していた。
子供も・・・女の子が二人いる。
可愛い盛りなのだ。

しかし、大病をした山村功は、自分が生きられるのは・・・
もしかしたら・・・そんなに長くはないかもしれない・・・
心を偽った生き方はできない・・・

そんな、思いにとらわれていた。
心のままに生きたい・・・とも思っていた。

山田好恵とは20歳も年も離れている・・・

自分は女性には人気がある方だと思っていた。
しかし、山田好恵にしてみれば、おじさん・・・なのだ。
一向に興味を持ってもらえなかった。

そんな山村功である。
須田冬美のメールに付き合っているどころではないのだ。

山村功は真剣に離婚も考えていたので・・・
まだ、山田好恵に振り向いてももらえないのに・・・
円満に離婚することを考えていたので、妻に須田冬美のことで
変な誤解を招くことも避けたかったのだ。

なのに・・・
なのに・・・
須田冬美からのメールは、ますます過激になっていて
性的なことを要求するようなキワドいものもあった。

人の恋路を邪魔するヤツは馬に蹴られてナントやら・・・
山村功はそう思った。

山田好恵に対する恋心は、本当に純真なものだった。
中年男の純真な思いは、まるで少年のようだった。




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2008年09月06日

山村功・・・悩む・・・

山村功は悩んでいた・・・
須田冬美の旦那に、はっきり断れ・・・といわれても
断りたいのは、やまやまなのだ。

病気だというので、ここまで関わってしまったのだ。
病気でもなんでもない状態なら・・・
自分からなんて絶対連絡しないだろう。

山村功は結婚しているわけだが・・・
その状態を差し引いても・・・

タイプではないのだ。
正直、見ているだけでイライラした。

須田冬美が、服を脱いで全裸で自分に迫ってきたとしても・・・
据え膳食わぬは、ナントやら・・・と言われたとしても・・・

決してそんな関係にはならない。
むしろ逃げ出すかもしれない・・・
とさえ、思った。

メールだけの関係だって本当はすぐにでもご遠慮願いたいのだ。

だが・・・しかし・・・
メールの返事が遅れたくらいで、寝込んだり、事故を起こしたり
発作を起こして病院へ担ぎ込まれたりしているのだ。

もっと、ひどい状態になった日には、寝覚めが悪くてかなわない。

そんなことを考えていると、厳しい内容のメールを送ることを
ためらってしまう、山村功だった。


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posted by 桃色珊瑚 at 20:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 慧子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月05日

須田冬美の夫・春樹の苦悩

そんなある日のこと・・・

山村功の元に、一人の男が訪ねてきた。
須田春樹・・・冬美の夫である。

春樹は冬美の我侭な性格は良く理解していた。
子供のように我侭な冬美でも、春樹にとっては
かわいくて仕方ないのだ。

冬美の病気も我侭な性格故、なかなか治らないことも
よくわかっていたし、たくさんの人に迷惑をかけていることも
理解していて、申し訳なく思っていた。

この頃になると、冬美は山村功からのメールの返事が来ないと
時間も関係なく電話さえするようになっていた。
しかもメールの内容もかなり過激になっていた。

完全に自分は山村功の恋人だと思い込んでいたのだ。

しかも、自分は病気なんだから我侭は許されていいのだ・・・
と、強気になっていて、ふた言目には、山村功との関係は
「私にとってはお薬なの! 私は病気なんだから!」
と言って、開き直ってしまうのだった。

そんな冬美の態度を見ていると、春樹は自分の妻が
どれほど多くの人に迷惑をかけているのか、不安に
なってくるのだった。

春樹にとって山村功は、舞台でしか見たことのない相手だった。

しかし、自分の妻の我侭で山村功の家庭に陰を落とすような
ことがあっては、申し訳なさすぎる。

そして何より、妻を支えるべきは自分なのに、冬美は
他の男に安らぎを求めていることが、何より辛かった。

春樹は、冬美が最初に発作を起こしてから、心労で
10kgも痩せてしまった。


「妻がいつもご迷惑をおかけしております」
深々と頭を下げると。春樹は初対面の山村功に自己紹介をし、
おもむろに本題をきりだした。

「妻からのメールや電話、ご迷惑でしたら・・・
迷惑だとはっきり言ってやって下さい。
もし山村さんから、断られたことで、妻が傷ついても
たとえ病気の発作が起きたとしても、その時の為に
私がいるのですから・・・」

そういって礼儀正しく去って行く、春樹の後ろ姿を
見送った山村功の胸中は複雑だった。




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2008年09月02日

疑似恋愛をする須田冬美

その頃、須田冬美はというと・・・

ますます、山村功にハマっていた。
そして、山村功からのメールの返事が来ないといった
ことで、パニック障害の発作をおこし何度も救急車で
運ばれるといった状態になっていた。

最初のうちは、励ますつもりで、「人を好きになるのは
素敵なことだよ」などと歯の浮くようなメールを送っていた
山村功は、正直もうあきれ果てていた。

須田冬美は、自分の中で疑似恋愛のような状態を作って
しまっていたのだ。

自分と山村功は恋人同士のような錯覚を起こしていた。

ヨン様に憧れる、おばさま達ももしかしたらヨン様と
自分の妄想の中で疑似恋愛しているのかもしれないが・・・

大きな違いは、ヨン様は直接メールや電話はできないが
山村功はメールも電話も、会うことさえできてしまう・・
ということだ。

そういった、自分が勝手に作り出した不安定な状態を
紛らわすため、ダンスに打ち込んでみる須田冬美であった。

執着心の強い須田冬美である。

異常な程、ダンスに執着して・・・

それはそれで、周りに波紋を呼ぶのだった。




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2008年09月01日

嫁気取りの慧子

安田の母親は、慧子の恐ろしさもまだわかっておらず
慧子と安田を結婚させようとしていたのだが・・・

今まで、慧子と結婚してしまった男達より、安田は
まともだった。
何故なら、結婚する前に慧子の恐ろしさに気付いたからだ。

安田は無理に慧子をさけるようなことはしなかった・・・

そんなことをしたら、慧子の自分に対する執着がますます
ひどくなることは目に見えていた。

頻繁にかかってくる電話は、忙しいときは無視したし
面倒なときも無視した。

が・・・暇な時は電話に出てやった。

安田は、仕事となると食事をとらないことも
あるほど、仕事熱心だった。

故に慧子は電話を無視されても、安田は仕事で忙しいんだ
と、自分を納得させていた。

たまには弁当を買ってくることを、慧子に頼むこともあり、
なんとなく便利に使っていた。

安田は時間を稼いでいるうちに、慧子が自分に飽きてくることを
願っていた。

そして、特に別れを切り出すこともなく、フェードアウトして
いこうと、考えていた。

慧子は相変わらず、安田の実家に入り浸っていた。
もう、態度は嫁気取りだった。




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2008年08月30日

慧子も自分勝手に盛り上がる

須田冬美が山村功を相手に自分勝手に盛り上がっている頃・・・
慧子はというと・・・

慧子も自分勝手に盛り上がっていた。
年下の彼氏よっしーとはもうとっくに別れていて
よっしーの先輩の安田という男と付き合っていた。

よっしーの先輩といっても、慧子よりは年下で自営で
車の整備関係の仕事をしていた。

安田には慧子も久々にだいぶ入れあげていて、まさに勝手に
盛り上がっている状態だった。


いつものように、なぜか安田も慧子のことをひまわりのような
明るい女性だと勘違いしての付き合いはじめだった。

慧子もいつものように、甲斐甲斐しくしつこく世話を焼いた。

今回は何故か慧子は結婚を意識していた。

そして、結婚を意識したことで、いつも以上にしつこく
自分勝手に盛り上がるという行動を取ってしまうのだった。

安田にしても慧子の方を向いていたのは、最初の1ヶ月程だった。
慧子の粘着性のしつこさには、絡み付かれたらなんとしても
逃れたいと思わせるものがあった。

電話は1時間に1度は鳴るし・・・
自分の居ない間にズカズカと部屋に入るし・・・

程なく、安田の携帯の慧子の着信音は「ゴジラのテーマ」に
設定された。

まさに慧子は安田にとって、ゴジラのような存在に
なっていたのだ。

しかし、相手が自分を憂っとおしがっていることを
感じると、ますますしつこくなる慧子であった。

慧子は安田の母親に気に入られようと必死だった。

お土産を手に度々、安田の実家を訪れていた。

しかも、勝手に・・・

何も知らない安田が実家に帰ると、そこには慧子が居る・・・
その時の安田の衝撃は大変なものだった。
変な汗が出てきて、ドン引きの状態であった。

慧子の話術は、年寄りにはウケがいいらしく
なんとも楽しげな雰囲気なのだ。

その日以来、安田は実家にも滅多に顔を出さなくなってしまった。

慧子は・・・というと
安田が実家に来ても来なくても、関係なく頻繁に
安田の実家に出入りするのだった。



参考記事
・代行代行・・・バイトも代行



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2008年08月29日

自分勝手に山村功にのめり込む須田冬美

須田冬美にとって山村功とのメールのやりとりは
生き甲斐になっていた。

返信が来ると、飛び上がる程嬉しかった。

そして、だんだんと毎日のようにメールを送るように
なっていた。
メールを出して返信が来る・・・
しかし、須田冬美の場合はその返信にまた返信をする。
その繰り返しなのだ。
どこで終わらせていいのか山村功のわからなくなっていた。

須田冬美はメールの中に必ず、問いかけをしていた。
それは意図的なものだったのだが・・・

2往復程のメールのやり取りならば、誰もさほど負担は
感じないだろう。

しかし、それ以上となると仕事の合間などに送るメールである。
出しそびれてしまったり、メールもできない状況もある。

しかし、須田冬美はそんなことはお構いなしだ。

もともと、ひとつのことに執着するタイプである。

・・・なぜ、返信がないのか気になって気になって
家事も手につかない、食事も喉を通らない
そんな状態になってしまうのだった。

最悪なのは車の運転だった。

山村功のことが・・・メールの返信がすぐにこないことが・・・
気になって、須田冬美は事故を起こした。

それも一度や二度ではない。

ガードレールにぶつけたり、壁にぶつけたり
ポールにぶつけたり・・・
幸いなことに人身事故はなかったものの
何度もぶつけては修理に出していた。

山村功は軽い気持ちで、自分が少しでも役に立てば
という気持ちで始まったメールのやり取りであったが
須田冬美はますます山村功にのめり込んで行ったのであった。

しかも・・・自分勝手に・・・


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2008年08月28日

山村功、悲劇の始まり

須田冬美と携帯の番号とアドレスを交換した山村功だったが・・・

ここからが山村功の悲劇の始まりだった。

そして、その悲劇は少しづつやってくるのだった。
そのことをまだ山村功は知らない。

須田冬美はパニック障害の診断を受ける前
まだスタジオにも来ていない頃、鬱病の診断を
受けた時期があった。

それは、父と母そして姉を相次いで亡くしたショックからだと
医者には言われた。
そのころ、冬美は、結婚もしており子供もまだ小さかった。
育児ノイローゼとも重なったものだった。

病名はともかく、冬美は一つのことに固執する習性があった。
性格的なものだったのだが、気になりだすと気持ちを紛らわせたり
切り替えたりということができなかった。

冬美は旦那がいるにも関わらず、山村功こそ自分の病気を
癒してくれる男だと思い込んでしまったのだ。

最初はメールでの他愛の無いやりとりから始まった。

須田冬美は、女子力アピールしまくりで可愛い絵文字いっぱいの
メールをなんだかんだ理由をつけては送っていた。

しばらくの間は友達感覚の何気なく可愛らしいメールが
送られていた。

山村功も慧子から事情を聞いていたので、自分とメル友に
なることで、冬美の体調が少しでも良くなれば良いという
奉仕の精神だった。

冬美は山村功からメールの返信が来ることが何よりの
楽しみとなっていた。




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2008年08月26日

山村功に会い、感激の須田冬美

山村功は大病を患ってから、自分の今までの生き方を
考え直していた。
今までの妻の実家の仕事も辞めて、好きな演劇で倹しくても
生活をたてていた。

子供達に演劇を見せる劇団に就職したのだ。
派手さはない、地味な仕事だったが自分が本当に
好きなことを仕事にできる喜びは他のものには
代え難かった。

子供達が自分たちの芝居を見て目を輝かせるのは
本当に嬉しくやりがいも感じていた。

誰かに喜んでもらうことに自分の喜びを見いだした山村功は
劇団の同僚とバンドのようなものも作って施設などを回って
歌を歌うという活動も始めていた。

病院や養護施設、老人ホームなど呼ばれればどこにでも行った。

慧子はそのミニコンサートに回復しつつある須田冬美を誘った。

須田冬美にとっては、感激のできごとだった。

慧子と一緒に直接、憧れの山村功に会うことができたのだ。

用意していたプレゼントを渡し、握手をし・・・
須田冬美は感激のあまり、過呼吸になりそうだった。

そして、なんと携帯のアドレスまで交換してしまったのだ。




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2008年08月24日

須田冬美の純愛

須田冬美がストップスに入会した訳は、実はダンス以外にも
あったのだ。
須田冬美は、結婚前別のスタジオで踊っていた。
そのスタジオは実力も折り紙付きの老舗のスタジオでだった。
ストップスとは比べ物にはならない程、真面目で堅実だった。

須田冬美はそんな中、真面目にレッスンに取り組んでいた。
しかし、才能のあるダンサーはどんどん育っていくもので
冬美はいくら練習しても、今ひとつ抜きん出ることができなかった。

そんな、冬美は友達に連れられてストップスのコンサートを
見に来るようになっていたのだが、冬美の関心はダンスやお芝居といった
コンサートの中身より、ストップスのトップダンサー山村功だった。

もうすでに結婚して子供も二人もいるというのに、どうしても
山村功のことが忘れられず・・・
といっても、コンサートの舞台で見ているだけで、直接あったことは
ないのだが・・・
どうしても会いたいという思いで、ストップスに入会したのだ。


こういう恋愛ごとには、鼻の効く慧子であった。

なにか間違いでも起きれば、面白いと思い、須田冬美が
回復してスタジオに来れるようになったら、山村功に会わせる
という、約束を・・・自宅療養中の須田冬美としたのだ。

面白いもの見たさの、慧子の悪戯だった。

その約束を真に受けた須田冬美は、超ハイペースで回復していった。


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